イケイケだった30代と、その後。
宇多田ヒカルの「20代はイケイケ」を勝手に借りてぼくは10年前「30代はイケイケ」というタイトルの日記をどこかに書いた。確か29歳だったかな。それは当時みんな使っていたmixiだったかもしれない。
そして30代のぼくは概ね、そのとおりイケイケだった。37歳を迎えるまでは。
転職する度に年収は倍々ゲームのように増えていき、転職する毎にワークライフバランスが改善していった。
私生活も自分なりには充実していた。
公私ともに出来ることの範囲が広がっていった30代を過ごしながら、大人になるって素晴らしい!30代最高だね。と思っていた。
30代前半というのはたぶん、知力、体力、経験値のバランスが最も良く取れていて、そこに裏打ちされたやる気と仕事に費やす時間がドライブする自身の学習や成長の軌跡、結果としてのキャリアの発展が著しい時期だという実感が、振り返ればあったと感じる。文字通り、イケイケだった。
30代後半にぼくはキャリアのギャンブルに出た。今思えば、これまでのところ、そこが自分の最高潮だった。
ギャンブルは大失敗に終わり、さらに悪いことに体力が急激に衰え始めた。体力が衰えると知力に影響し、それは気力の低下に繋がる。人間はそんなピラミッドを持っている。
両親も歳をとり、70代半ばに差し掛かって病気がちになってしまった。
全てが逆回転を始めた。
エンジンが故障してしまった飛行機のように、急激に高度を失い始め、やがてそれは思い通りに操縦することさえ難しくなった。
速度を維持しようとすれば高度を失い、高度を確保しようとすれば失速する・・・こんなはずでは無いと思ってみたところで現実がそこにあり、とりあえずは、とにかくそこにひとつずつ対処するしかない。
こんな姿をかつての自分が見たら、何を行き当たりばったりもがいているのかと、怪訝に思ったことだろう。
久しぶりに会った友人は、ぼくを見て「すっかり小さくなったね」と言った。
彼が知る30代半ばのぼくは、曰く、肩で風を切って歩いていたらしく(笑)なんだか自信に溢れていたのにと、ふと言われた。
そうか、そうだろうなと思い、情けなかった。
でもとにかく自分は、今やれることをやるだけ。それは今も昔も特に変わらない。
歳をとれば時の流れが加速すると言われるけれど、ぼくにとって30代は長かった。
特に後半の数年間は、途轍もなく長い記憶の中にある。
そして来年ぼくは40歳を迎える。
40代はイケイケでなくて良い。真に自分を把握した生き様を描いていく10年間でありたい。